【Publication Archive】 Study focusing on iron metabolism and mitophagy for the treatment of NASH and HCC published in EMBO Rep.
本日は、肝細胞がんと非アルコール性脂肪肝炎 (NASH)の治療ターゲットとして、細胞内の鉄代謝やマイトファジーに着目した論文をご紹介いたします。
Title: Iron loss triggers mitophagy through induction of mitochondrial ferritin
► Full text LINK [Hara Y et al., EMBO Rep. 2020]
本論文では、鉄キレート剤による肝細胞のマイトファジーの誘導がHCC発症を抑制することを明らかにしており、STAM™マウスにおいても鉄キレート剤の摂取によりマイトファジーの促進およびHCC発症の抑制効果が確認されております。
【概要】
鉄キレートにより肝細胞における鉄欠乏を誘導すると、
・hypoxia‐inducible factor‐1α (HIF1α)‐specific protein 1 (SP1) 経路を介してミトコンドリアのフェリチン(MTFT)が増加した
・ミトコンドリアフェリチン(FTMT)は、オートファジーのカーゴ受容体であるnuclear receptor coactivator 4(NCOA4)と特異的に相互作用した
・マイトファジーは、脱分極したミトコンドリアに対して選択的に生じることが示唆された
・HCCの発生が抑制された
本研究ではNASH病態を形成し始めるフェーズのSTAMマウスに介入していることから、鉄キレート剤の摂取やマイトファジーの促進はHCCだけではなく、NASH予防にも繋がることが示唆されます。
一般的に、フェリチンがオートファジー分解されることはフェリチノファジーとして知られており、細胞内の鉄レベルの維持に重要な機能です。本研究で観察されたFTMT特異的なマイトファジーも、フェリチノファジーの一部である可能性があります。また、フェリチノファジーはフェロトーシスを正に制御することが報告されております [Santana-Codina N. and Mancias JD., Pharmaceuticals (Basel). 2018]。したがって、本研究内容は、フェロトーシスによるNASHおよびHCCの予防・治療の研究開発のヒントになることが考えられます。
フェロトーシスやフェリチノファジー、マイトファジー、鉄代謝に着目したプロジェクトをお持ちの方は、STAM™マウスを用いたin vivo試験を検討されてみてはいかがでしょうか?